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春吉ほだかインタビュー

「デザート」で活躍中の漫画家さんに、デビューからこれまでを伺うインタビューシリーズ。
今回は、8月号の別冊ふろく「Pink」で初の本格連載がスタートしたばかりの
春吉ほだかさんにインタビューを決行!
投稿からデビュー、連載化が決まるまでのお話から、
新連載『誰のための愛なのか?』の制作秘話まで、
たっぷり聞かせていただきました♡
“初”の少女マンガへの持ち込みで説得を受けて…!?

ーー「デザート」に投稿することになった経緯から教えてください

私はもともと、マンガ家を目指すクリエイターたちが共同生活を送りながらプロを目指す支援プログラム、「トキワ荘プロジェクト」に参加していました。「トキワ荘プロジェクト」では、不定期で出版社を招いた出張編集部※が開催されているのですが、そこに「デザート」がきていたことが持ち込みのきっかけでした。
※編集者が、イベント会場などでマンガの持ち込みを直接受け付ける機会のこと。当時はコロナ禍のため、オンラインで開催

ーー時期としては、いつ頃でしょうか?

2020年の秋頃だったと思います。当時はファンタジーがメインの作品を描いていて、他社で担当編集の方もついていたのですが、デビューはできていない状況で。視野を広げて、恋愛系の漫画にも挑戦しようかな…と思い始めていた時期でした。ただ、恋愛モノに自信があったというわけでもなくて…。だから、持ち込みをしたもののその場で「恋愛系の作品を描くのが得意じゃないから、不安です」と正直に話したんです。そうしたら、「絶対にできるから、挑戦してほしい」と言われて。

ーー具体的にはどんなことを言われたのか、覚えていますか?

表情やロマンチックなシーンなど、少女マンガに必要な描写がちゃんと描けているから苦手意識を持つ必要はない、ということを言ってもらったと思います。
それで、そんなふうに言ってもらえるなら、やってみようかな…と、「デザート」への投稿をはじめました。

ーー投稿作を作るなかで、日々、意識していたことはありますか?

少女マンガを描くにあたって、“恋に落ちます”というところから考えると何も浮かばなくなってしまうので、まずは目に入ったものを“恋愛に発展させるには、どうしたらいいかな?”と考える訓練をしていました。
あと、さっき「恋愛作品が得意じゃない」という話をしましたが、それを払拭できたのもよかったのかもしれません。当時、恋愛マンガを多く手掛けていらっしゃるマンガ家の先生がTV番組に出演されていて、インタビュアーから「恋愛モノばかりを描いていて、飽きることはありませんか?」と問われたときに、「人間と人間の話は無限にあるから、飽きるはずがありません」とおっしゃっていたんです。それを聞いた時に、自分のなかで恋愛作品を描く楽しみを見出せました。

ーーそういった日々の積み重ねや気づきなど、春吉さんご自身の変化も作品にいい影響を与えていったんですね! その後、第267回「DDD(デザート・デビュー・ドリーム)」※でデビューを決められましたね

はい、そうです。『テレ顔王子、準備中!』という作品がゴールド賞をとって、デビューすることになりました。出張編集部への持ち込みから考えると、約1年後だったと思います。
※毎月15日締め切りで開催されている、編集部主催の月励賞のこと



受賞後、2022年6月号の別冊「Pink」に掲載された。



ーー受賞作は、どうやって作っていきましたか?

最初に出張編集部で見てくれた方が、そのまま私の担当についてくれることになったので、アドバイスをもらいながら「DDD」に出す準備を進めていきました。特に印象に残っているのは、男の子のビジュアルへの指摘です。「高校生のはずのヒーローが、成人男性にみえる」と言われて、デビュー作は華奢な線を意識しながら描いた記憶があります。

ーー投稿作を作っていく過程で、ほかに印象に残っていることはありますか?

実は、受賞作である『テレ顔王子、準備中!』の前に、「これで絶対デビューするぞ!」と意気込んで投稿した作品があったのですが、ダメだったんです…。
「DDD」は、応募者全員に作品の長所や課題点などを記した講評シートが送られてくるのですが、当時の担当さんから用紙の裏面にまで私への愛のメッセージが書かれていて…!
その頃、「デザート」への投稿を始めてから1年足らずでしたが、投稿歴そのものは9年くらいになっていたので、そろそろデビューしたいという焦りもありました。だからダメだったときは本当に落ち込んだんです。でも、そのメッセージを見て「もうちょっと頑張ってみよう」と思えました。

ーーそこでもうひと踏ん張りできたことが、デビューにつながったんですね!


2代目の担当編集とはスパルタな(!?) “絵の特訓”を決行

ーーデビューが決まって以降は、コンスタントに読み切りが掲載されてきましたね。特に思い入れのある作品はありますか?



デビュー後一作目となった、『未知なキモチを知りたくて。』という作品です。

ーークーポン好きのヒロインがとても魅力的な作品でした!

ちょうどこの頃、担当さんが別の方に変わったのですが、その方とは、“絵の特訓”をしました。

ーーそれはどんな特訓だったのでしょう?

私が一生懸命、描いた男の子の絵を提出すると、首の位置がズレてるとか、等身が変だよといった具体的な指摘が戻ってきて。そこを修正してはまた提出するという、かなりスパルタな練習でした(笑)。あとは、私の特徴でもあるのですが、女の子にパワーがある反面、男の子が弱くなりがちで。男の子をかっこよく見せる意識を持とう、という話をよくしました。

ーーそれはキャラクター性の部分ですか?

というよりも、“ヒロインが、ヒーローをちゃんと好きになる説得感”をどう表現していくか、ということです。これはいまも課題の一つなのですが、『未知なキモチを知りたくて。』のあたりから、その点を大事にしながら作品作りを始めた記憶があります。

ーー一人一人でやり方はいろいろかと思いますが、春吉さんにとって担当編集者とはどんな存在でしょうか?

道標です。私の好きなように描いてしまうと、必ずしも読者のみなさんにとって嬉しい作品にはならないと思うんです。私は、たくさんの方に楽しんでもらえる作品を作りたいので、そのために客観的に何が足りないのか教えてくれる存在は、やっぱり必要だなと感じています。
それから、「デザート」のみなさんは、とにかく優しい(笑)。

ーー言わせていませんか…?(笑)

いえいえ、本当に(笑)。いつもやりとりをしながら、作品と私に対してのリスペクトをもって接してくれていると感じています。変えたほうがいい部分を伝える時も、なぜダメなのかをきちんと説明してくれるのはもちろん、こちらが傷つかないように話してくれる配慮がある。だから、スムーズに次の方向に進めるんです。
以前は伝わらなかったら「ダメなんだ…」と思い込んで落ち込んだ時期もありました。でも、これまでのやりとりで自信がついたこともあって、「意図した通りに届いていないみたいだから調整しよう。ネタがおもしろくないわけじゃないんだから」と思えるようになりました。

ーーありがとうございます! 改めて、私たちも身が引き締まる思いです!!


初の本格連載『誰のための愛なのか?』がスタート!

ーーそして、ついに「デザート」8月号の別冊「Pink」で連載『誰のための愛なのか?』がはじまりました。本作はミステリー要素もある作品ですが、テーマなどはどうやって決めていったのでしょうか?



1話目のまるごとお試し読みはココから♡



“連載”として、読者の方に楽しんでいただけるものってなんだろうと、悩みに悩みました(笑)。さっき、読み切りの時は「身近にあるものを恋愛に発展させる訓練をしていたとお話ししましたが、それだと連載にはならないなと気づいてしまって。
読んで満足していただかないといけないけど、続きが読みたくなる要素も残さないといけない。どうしたらいいんだろうと、迷走する日々でした(笑)。
それで、担当さんに好きなマンガをピックアップしてもらったんです。

担当編集:お気に入りの作品をリストアップしたら、男の子がイケメンで色っぽいマンガばかりになりました(笑)。

あはは、そうでしたね(笑)。色気や逆ハーレムなど、読者の方へのサービスがしっかり盛り込まれている作品が多いなと感じて、“読んで楽しいと思ってもらうことの大切さ”をあのリストからは受け取ったなと思います。
それに、担当さんがお金を払った作品なので、“惹きつけた魅力はなんだろう”、“1話目にどういう要素を入れて描いているんだろう”という視点で読んで、自分に取り入れられる部分を探りました。

ーーそうやって、インプットの作業をされたんですね!

はい。それから、自分が好きなものの整理もしました。これまで好きだったマンガを振り返ったのですが、その際に少女マンガであっても男の子同士の友情が描かれている作品が好きだなと、改めて気づいて。また、私は好きな人の前で情けなくなってしまう男の子っていいなと思っていて。ただ、そういうキャラクターは、少女マンガでヒーローを張りづらい。ならば、Wヒーローものがいいかな…と、自分が好きな関係性やキャラクターなどを見直していきました。
あと、連載である以上「続きが気になる!」と思っていただきたいので、ミステリーの要素も入れようとなって、いまの形になりました。ただ、私が最終的に描きたいのは“人間の話”だという軸は変わっていません。

ーーミステリーも、Wヒーローも技量がいることなので、すごいことにチャレンジされているなと思います! 方向性が決まってから、具体的なキャラクター像はどうやって考えていかれましたか?



(左)中学時代、みみが“図書館の天使くん”と崇めていた男の子・千代木楓真。優しい笑顔と裏腹に、どこか影があって…?
(中央)明るくまっすぐなヒロイン・岩隈みみ。中学時代にひと目惚れした楓真と、高校で再会♡
(右)楓真の親友(現在はケンカ中)・荒手豊。みみとは高校で同じクラスに。こわそうに見えて、意外と素直な一面も。



ヒーロー2人は、最初に浮かんだイメージからほぼ変わってないと思います。ただ、ヒロインのみみは、だいぶ変わりました。当初、彼女は周囲から頼られるけど、自分は友達を頼れなくて思いを溜めてしまうような子として考えていたんです。ただ、それだとちょっと話が難しくなりすぎてしまって…。
本作では、男の子2人の深い友情や謎で引っ張りたいからこそ、担当さんとも相談して、みみの要素をだいぶシンプルに変更しました。

ーー読者の方に注目して読んでもらいたいポイントや、気に入っているシーンはどこでしょうか

千代木楓真くんの、コロコロと変わる表情です。彼がなぜこんな顔になっているのか…ということを想像しながら読んでいただけたら、すごくうれしいです。気に入っているのも、1話目最後の千代木くんのシーンです。



担当編集:モノローグも、すごくいいなと思いました!


どうかな…と思いながら出したのですが、ダメなら削ってくれるだろうと出したら、そのまま採用になって嬉しかったです。

ーー作品作りで、春吉さんが特に大切にしているのはどんなことでしょうか?

前述と少し重複しますが、やっぱり登場人物たちの行動に説得力があることです。
マンガやドラマを見ていて、キャラクターの言動の理由がわからないと、「なんでこんな行動をしているんだろう?」ということに意識が持っていかれて、話が入ってこないことってあると思うんです。
だから、ちゃんとエンターテイメントとして楽しんでもらうために、私はすべてが違和感なく繋がるように作品を描きたいと思っています。

ーー一歩一歩、着実に目標を叶えてきた春吉さんですが、これからマンガ家を目指す方にアドバイスはありますか?

自分の好きなものを明確にする時間を作るといいんじゃないかなと、思います。きっと好きなものを描くときが、いちばん筆がのるはずなので。あと、何事に対しても自分の意見を持つようにして、そこで思ったことを少女マンガだったらどう再現できるのかな…というところまで考えるクセをつける。そうすると、ぐんと話を作りやすくなるかなと思います!

ーー最後に読者の方へのメッセージをお願いできますでしょうか

予測不能のトライアングルラブ『誰のための愛なのか?』が別冊「Pink」で始まりました。正反対のWヒーローが登場しますので、「自分はどっち派だろう?」と考えながら、この先の展開を見守っていただけたら嬉しいです!

ーー今日はありがとうございました!



『誰のための愛なのか?』作品紹介ページ



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