
デザートで活躍中の漫画家さんが作品制作の舞台裏を語る、漫画家志望の方と
漫画好きのみなさんに贈るインタビューシリーズ第2回!
今回は初コミックス『あたし、キスした。』①が大好評の満井春香さん。
担当編集のすしタロと一緒に、毎話魅力たっぷりの読み切りシリーズ
『あたし、キスした。』の制作秘話を語ってくれました!
常に「読者にドキドキしてもらう見せ場づくり」を意識していると
いう満井さんのお話からは、投稿者必読の「心に残る読み切りのつくりかた」が
見えてくる!?
(取材・文/デザート新人賞 事務局)
満井春香『あたし、キスした。』①
――初コミックスとなる読み切りシリーズ『あたし、キスした。』の第1巻が
発売即重版の大好評です! 今回はデビューからコミックス発売までのお話や、
作品づくりについて色々と聞かせてください!
満井さん:
役に立つようなお話ができるのか…緊張しますが、どうぞよろしくお願いいたします。
私一人では不安なので、フォローしていただくために担当のすしタロさんも一緒に
お願いします(汗)。
担当編集すしタロ:
よろしくお願いします(笑)。
――(笑)お二人ともよろしくお願いします!
さっそくですが、満井さんの初コミックス『あたし、キスした。』①について
聞かせてください! こちらは毎回違うキャラ&異なるシチュエーションでの
魅力的なキスシーンでドキドキ楽しませてくれる読み切りシリーズ。満井さんが
読み切り作品を描かれる上で、特に心がけていることはなんですか?
満井さん:
そうですね……各話ごとの「テーマ」は設けています。
ただ、あまり掘り下げすぎないようにもしています。たとえば1作目の「ボーダー
ライン」のテーマは“友達突破キス”。「よく友達がこんな恋の悩みを話してるな」
と思われるものを選ぶようにしています。
悩むのは「冒頭のつかみ」と、やっぱり「見せ場づくり」です。
毎回出てくる男女が違うので、最初の数ページで二人の関係性をわかりやすく見せ
ようと思っています。
「ボーダーライン」では、冒頭で男の子の部屋のベッドの上に二人を並べて、
「幼なじみ」という言葉を使わずに親密さを伝えようと思いました。それと、
やはり最初の数ページで主人公が乗り越えなければいけない「ハードル」…ここでは
<友達から彼女になること>を出すようにしています。そして、ラストで主人公が
この「ハードル」を乗り越えて終わるようにしています。
「ボーダーライン」の冒頭シーン。3コマで「ただの友達じゃない」ことが伝わる。
(「ボーダーライン」from『あたし、キスした。』①)
「見せ場づくり」には本当にギリギリまで悩みます。『あたし、キスした。』では
やっぱりキスシーンを一番見てほしい! 読んだ人にキャラの緊張感や体温が伝わって、
一緒にドキドキしてもらえるように、原稿〆切前までずっと描き直しています(苦笑)。
すしタロ:
確かにこの「キミが僕を知ってる。」のキスシーンも、何度もやり直しましたよね!
満井「男の子の顔の角度まですしタロさんと一緒に何度も検討しました」
(「キミが僕を知ってる。」from『あたし、キスした。』①)
すしタロ:
満井さんはデビュー当時、今とは違って、やや画面にメリハリがなくこじんまりとした
印象だったんですよね…。見せたいシーンもあるし絵もすごく上手いのに、もったい
なかった。それに、もっと画面から恋のドキドキ感が伝わるようになってほしかった。
それで、練習として毎回“キスシーン”を描いてもらおうと思ったんです。
満井さん:
私にとっては、ものすごい挑戦でした(笑)。
――デビュー当時と比べると、見せ場でのアップのコマが増えましたよね?
満井さん:
はい。“キスシーン”を描くようになり、すしタロさんに「感情がもっと伝わるように
アップ顔を増やそう」と言われて、意識して増やしました。キャラのこういう気持ちが
伝わるかな、と表情の細かいところまで神経を使って微調整を繰り返すのでアップの
絵は大体、修正液まみれです…(笑)
――キャラの感情が伝わるような絵を描くときに、具体的に心がけていることは
ありますか?
満井さん:
ちゃんと伝わっていたらいいんですけど……当たり前かもしれませんが「その瞬間の
キャラの気持ち」を自分のなかではっきり持つということでしょうか。
それと、絵と言葉とで役割を分けて考えるようにしています。たとえば「星くずと
ヘッドフォン」のなかで、男の子が主人公の手を掴んで「やっぱオレとつき
あえよ」と言うアップのコマ(下のイラスト②)があるんですが……
同じお話のなかの似たセリフでも、①と②では伝わってくる気持ちがまったく違う。
満井「この男の子は言葉とうらはらなことをいつも考えているので、表情にはかなり神経を使いました」
(「星くずとヘッドフォン」from『あたし、キスした。』①)
満井さん:
彼は普段はチャラい男の子。このコマでも、口ではいつものチャラいセリフを
言いますが、目は真剣で「本当に好きなんだよ」って気持ちが溢れ出ている。
言葉とはうらはらな心情が、読んでる人に伝わってほしいと思って描いたつもりです。
これも何度も下絵を描き直しては見てもらって……。
このシーンについて「好きって言われているみたいだった」と感想を書いてくだ
さった読者の方がいてすごく嬉しかったです。
――『あたし、キスした。』以降、満井さんの作品は、雰囲気も変わって
格段に読みやすくなったと思うんです。意識して画面構成を変えたんでしょうか?
満井さん:
そうですね……シーンやコマを慎重に選び抜くようになりました。
コマ割りは基本見開きページ(右ページと左ページの2P)単位で考えます。
そのなかで、このコマを一番見せたい、次はこのコマで…と必ず優先順位をつけます。
見せ場にしたい、と思っている絵があっても、他のコマたちに埋もれたり、無駄に
ページが増えたりすると、肝心のコマの印象がどんどん薄まってしまう気がするんです。
画面のメリハリのためにシーンやコマを厳選する、というのはかなり大事なことだと
思ってます。
すしタロ:
最近は、ネームで無駄なコマを描かなくなりましたね(笑)。デビュー当時は、
よくひとつずつ指摘していました。
満井さん:
ネーム中に天の声(すしタロさんの声)が聞こえます。「このコマいらないよ」
「同じこと繰り返しているよ」って(笑)。
読み切りってページが限られるし、見せられることも限られているので、意図せずに
似た絵やセリフを繰り返してしまうと、たぶんすぐ読者に飽きられてしまう……。
とにかく「この絵さっきも見た」とかダラダラした印象を持たれたり、飽きられ
たりしないようにするにはどうしたらいいか、工夫するようにしています。
そうやってシーンやコマを厳選する分、どの瞬間を絵にするか、ということを
すごく考えます。
たとえば「キミが僕を知ってる。」の下駄箱の壁ドンシーンは、急に男の子が迫って
きて、女の子がちょっと後ずさってしまった…みたいな前後の数秒間まで想像でき
そうな瞬間を絵にしました。
1コマのなかでどの瞬間を切り取るか、一番神経を使っているかもしれません。
――セリフや心理ネームなどはどうですか?
満井さん:
説明的でくどいセリフや心理ネームは、なるべく省くようにしています。
そのためには、「伝えるもの」を自分で把握することがすごく大事な気がします。
たとえば「星くずとヘッドフォン」のラストページの心理ネーム「フルボリュームで今…
好きって聞こえた」は、距離が縮まって嬉しい二人の気持ちを絵で伝え、ネームでは
「好き」って言葉が主人公の頭のなかに「フルボリューム」でどーんと響くように
「聞こえた」ことを伝えたかったんです。
ちなみに、すしタロさんから初めて一発OKをもらった心理ネームです(笑)。
ここも、絵と言葉の役割を分けて考えたシーンです。
(「星くずとヘッドフォン」from『あたし、キスした。』①)
絵もそうですが、言葉も厳選したもののほうが逆に多くのことを伝えられ、印象にも
残るのかなと感じています。
――読者にどう伝わるかをすごく考えられているんですね。そう思うようになった
のは何かきっかけがあったんですか?
満井さん:
読者をちゃんと意識し始めたのは、担当さんがついてくれてからです。
実は今まで話してきた「見せ場づくり」のこととか、投稿者時代は全部感覚で描いて
いました。「めくり」(注:ページをめくったタイミングでインパクトある絵や展開を用意するなど、
「ページめくり」を意識した構成のこと)の効果もデビュー後に知りました(笑)。
「この場面は、こう伝えたい」「こう読んでほしい」というのを、すしタロさんに
聞いてもらいながら、「じゃあこうしたら読む人にもっと伝わるよ」ってアドバイス
をもらって。
それまで感覚的だったものを、読者に伝えるための技術として意識するように
なりました。
もうひとつきっかけがあって…(苦笑)
デビュー作(「番犬ヒーロー」)を掲載していただいたとき、目次に憧れの
先生方と一緒に自分の名前が並んで、初めはすごく嬉しかったんです。でもその後は、
自分の作品の拙さを痛感しました。そうそうたる先生方の作品のなかで、少しでも
読者の興味を引きつけていかないと、簡単に読みとばされちゃうなと思って。
当時正直、自分の何がよくてデビューできたのかも、まったくわかってなかったし…
すしタロ:
私には「個性を持とう」と言われて……
満井さん:
ハイ(涙)。
――個性がない、と悩まれていたというのは意外です。
満井さん:
「個性」や「表現したいもの」を自覚したのは、『あたし、キスした。』を
始める直前でした。
デビュー後2作目の読み切り作品(「ダイスキのゆくえ」)が載った号が届いて、
自分の絵にひどくがっかりして……。下絵や鉛筆画のほうがよっぽどよく
描けてると思ってしまうくらい。
絵を変えるきっかけになった、「ダイスキのゆくえ」(THEデザート2015年1月号)のワンシーン
作品中盤の見せ場として「部活に燃える男の子が試合中に背中で主人公にガッツ
ポーズを贈る」という青春ど真ん中のシーンを描いたんですけど、自分では描けたと
思っていた「熱さ」が全然画面から伝わっていない。それで、青春っぽさやキャラの
気持ちをもっと熱い絵で表現したい、とすごく思って。どうしたら読者に、より
「熱さ」が伝わる絵を描けるようになるんだろう? と考えるようになりました。
すしタロ:
その後すぐに、満井さんはフルデジタルだった作画をアナログに戻したんですよね。
左がアナログ作画(「はつこいマーメイド」from『あたし、キスした。』①)
右がデジタル作画(「ダイスキのゆくえ」)
満井さん:
ええ。練習で描いたアナログ原稿を見ていただいたら、「こっちのほうが断然
“熱い”」ということになって。そこから絵に対する意識が変わり、綺麗さよりも
「熱さ」を重要視して描くようになりました。多少、線がガサガサしても、はみ
出しても、とにかく画面からキャラの「体温」や「熱量」が伝わることを最優先に
描こう! と。
すしタロ:
背景もリアリティーを出そうと、一緒にロケハンにも行きました。
満井さん:
すしタロさんと「青春の熱っぽさ」を描くのに、頭のなかで抽象的にしかイメージ
できない背景じゃリアリティーに欠ける…という話になって。『あたし、
キスした。』を始める前に、一緒に江ノ電のいくつかの駅で降りて写真を
たくさん撮りました。原稿では、リアルなその場所の空気感が伝わるように、スケッ
チする感覚でボールペン1本で描いています。
背景も作品の雰囲気を盛り上げる大きな要素。
『あたし、キスした。』①では海や駅が印象的に描かれる。
――『あたし、キスした。』①の第1作が掲載されたときは、絵の変化に
編集部員もみんな驚きましたが、いまではこの絵こそ満井さんの作品のイメージに
なっているし、大きな魅力や個性のひとつになっていると思います!
満井さん:
そうなっていたら嬉しいです。
思い返すと私がデザートを投稿先に選んだのは、元々読者だったことと、いろんな
タイプ(作風)の先生がいらっしゃるので、私にも何かプロとしてやっていける
武器や、光る部分を、編集部の方々がきっと見つけてくださるはず…と思っていた
からなんです(笑)。結果的にはデビュー後、担当さんと一緒に試行錯誤していくなかで、
自分にもわかっていなかった「個性」を発見してもらったんだと思います。
――なるほど! 満井さんのこれからの作品がますます楽しみになってきました。
満井さん:
ありがとうございます。頑張ります(嬉)。
――それでは最後に、投稿者の方に向けてメッセージをお願いします!
満井さん:
私は今も、ネームは一発OKなんてなく、全ボツもあります。自信が持てなかったり、
悩んで手を止めてしまいがちですがそれはもったいないです。限られた時間のなかで、
目の前の一コマを埋めながら、どれだけ修正できたかという「もがき」が大事だと
感じています。漫画を描く楽しさをめいっぱい原稿にぶつけて、頑張ってください。
――今日はありがとうございました!
〆切は年2回(3月末・9月末)!!
作品募集中!!!!!
毎月開催! 一緒に育てる新人賞!!
漫画好きのみなさんに贈るインタビューシリーズ第2回!
今回は初コミックス『あたし、キスした。』①が大好評の満井春香さん。
担当編集のすしタロと一緒に、毎話魅力たっぷりの読み切りシリーズ
『あたし、キスした。』の制作秘話を語ってくれました!
常に「読者にドキドキしてもらう見せ場づくり」を意識していると
いう満井さんのお話からは、投稿者必読の「心に残る読み切りのつくりかた」が
見えてくる!?
(取材・文/デザート新人賞 事務局)

満井春香『あたし、キスした。』①

――初コミックスとなる読み切りシリーズ『あたし、キスした。』の第1巻が
発売即重版の大好評です! 今回はデビューからコミックス発売までのお話や、
作品づくりについて色々と聞かせてください!
満井さん:
役に立つようなお話ができるのか…緊張しますが、どうぞよろしくお願いいたします。
私一人では不安なので、フォローしていただくために担当のすしタロさんも一緒に
お願いします(汗)。
担当編集すしタロ:
よろしくお願いします(笑)。
――(笑)お二人ともよろしくお願いします!
さっそくですが、満井さんの初コミックス『あたし、キスした。』①について
聞かせてください! こちらは毎回違うキャラ&異なるシチュエーションでの
魅力的なキスシーンでドキドキ楽しませてくれる読み切りシリーズ。満井さんが
読み切り作品を描かれる上で、特に心がけていることはなんですか?
満井さん:
そうですね……各話ごとの「テーマ」は設けています。
ただ、あまり掘り下げすぎないようにもしています。たとえば1作目の「ボーダー
ライン」のテーマは“友達突破キス”。「よく友達がこんな恋の悩みを話してるな」
と思われるものを選ぶようにしています。
悩むのは「冒頭のつかみ」と、やっぱり「見せ場づくり」です。
毎回出てくる男女が違うので、最初の数ページで二人の関係性をわかりやすく見せ
ようと思っています。
「ボーダーライン」では、冒頭で男の子の部屋のベッドの上に二人を並べて、
「幼なじみ」という言葉を使わずに親密さを伝えようと思いました。それと、
やはり最初の数ページで主人公が乗り越えなければいけない「ハードル」…ここでは
<友達から彼女になること>を出すようにしています。そして、ラストで主人公が
この「ハードル」を乗り越えて終わるようにしています。
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(「ボーダーライン」from『あたし、キスした。』①)
「見せ場づくり」には本当にギリギリまで悩みます。『あたし、キスした。』では
やっぱりキスシーンを一番見てほしい! 読んだ人にキャラの緊張感や体温が伝わって、
一緒にドキドキしてもらえるように、原稿〆切前までずっと描き直しています(苦笑)。
すしタロ:
確かにこの「キミが僕を知ってる。」のキスシーンも、何度もやり直しましたよね!
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(「キミが僕を知ってる。」from『あたし、キスした。』①)
すしタロ:
満井さんはデビュー当時、今とは違って、やや画面にメリハリがなくこじんまりとした
印象だったんですよね…。見せたいシーンもあるし絵もすごく上手いのに、もったい
なかった。それに、もっと画面から恋のドキドキ感が伝わるようになってほしかった。
それで、練習として毎回“キスシーン”を描いてもらおうと思ったんです。
満井さん:
私にとっては、ものすごい挑戦でした(笑)。
――デビュー当時と比べると、見せ場でのアップのコマが増えましたよね?
満井さん:
はい。“キスシーン”を描くようになり、すしタロさんに「感情がもっと伝わるように
アップ顔を増やそう」と言われて、意識して増やしました。キャラのこういう気持ちが
伝わるかな、と表情の細かいところまで神経を使って微調整を繰り返すのでアップの
絵は大体、修正液まみれです…(笑)
――キャラの感情が伝わるような絵を描くときに、具体的に心がけていることは
ありますか?
満井さん:
ちゃんと伝わっていたらいいんですけど……当たり前かもしれませんが「その瞬間の
キャラの気持ち」を自分のなかではっきり持つということでしょうか。
それと、絵と言葉とで役割を分けて考えるようにしています。たとえば「星くずと
ヘッドフォン」のなかで、男の子が主人公の手を掴んで「やっぱオレとつき
あえよ」と言うアップのコマ(下のイラスト②)があるんですが……
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満井「この男の子は言葉とうらはらなことをいつも考えているので、表情にはかなり神経を使いました」
(「星くずとヘッドフォン」from『あたし、キスした。』①)
満井さん:
彼は普段はチャラい男の子。このコマでも、口ではいつものチャラいセリフを
言いますが、目は真剣で「本当に好きなんだよ」って気持ちが溢れ出ている。
言葉とはうらはらな心情が、読んでる人に伝わってほしいと思って描いたつもりです。
これも何度も下絵を描き直しては見てもらって……。
このシーンについて「好きって言われているみたいだった」と感想を書いてくだ
さった読者の方がいてすごく嬉しかったです。
――『あたし、キスした。』以降、満井さんの作品は、雰囲気も変わって
格段に読みやすくなったと思うんです。意識して画面構成を変えたんでしょうか?
満井さん:
そうですね……シーンやコマを慎重に選び抜くようになりました。
コマ割りは基本見開きページ(右ページと左ページの2P)単位で考えます。
そのなかで、このコマを一番見せたい、次はこのコマで…と必ず優先順位をつけます。
見せ場にしたい、と思っている絵があっても、他のコマたちに埋もれたり、無駄に
ページが増えたりすると、肝心のコマの印象がどんどん薄まってしまう気がするんです。
画面のメリハリのためにシーンやコマを厳選する、というのはかなり大事なことだと
思ってます。
すしタロ:
最近は、ネームで無駄なコマを描かなくなりましたね(笑)。デビュー当時は、
よくひとつずつ指摘していました。
満井さん:
ネーム中に天の声(すしタロさんの声)が聞こえます。「このコマいらないよ」
「同じこと繰り返しているよ」って(笑)。
読み切りってページが限られるし、見せられることも限られているので、意図せずに
似た絵やセリフを繰り返してしまうと、たぶんすぐ読者に飽きられてしまう……。
とにかく「この絵さっきも見た」とかダラダラした印象を持たれたり、飽きられ
たりしないようにするにはどうしたらいいか、工夫するようにしています。
そうやってシーンやコマを厳選する分、どの瞬間を絵にするか、ということを
すごく考えます。
たとえば「キミが僕を知ってる。」の下駄箱の壁ドンシーンは、急に男の子が迫って
きて、女の子がちょっと後ずさってしまった…みたいな前後の数秒間まで想像でき
そうな瞬間を絵にしました。
1コマのなかでどの瞬間を切り取るか、一番神経を使っているかもしれません。
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間のコマを描かないことで、壁ドンされた女の子の「後ずさりする瞬間」や、下駄箱で彼女が「立ち 尽くしていた時間」を見せる。二人の気持ちが伝わってくるコマ割り。 (「キミが僕を知ってる。」from『あたし、キスした。』①) |
――セリフや心理ネームなどはどうですか?
満井さん:
説明的でくどいセリフや心理ネームは、なるべく省くようにしています。
そのためには、「伝えるもの」を自分で把握することがすごく大事な気がします。
たとえば「星くずとヘッドフォン」のラストページの心理ネーム「フルボリュームで今…
好きって聞こえた」は、距離が縮まって嬉しい二人の気持ちを絵で伝え、ネームでは
「好き」って言葉が主人公の頭のなかに「フルボリューム」でどーんと響くように
「聞こえた」ことを伝えたかったんです。
ちなみに、すしタロさんから初めて一発OKをもらった心理ネームです(笑)。
ここも、絵と言葉の役割を分けて考えたシーンです。
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絵もそうですが、言葉も厳選したもののほうが逆に多くのことを伝えられ、印象にも
残るのかなと感じています。
――読者にどう伝わるかをすごく考えられているんですね。そう思うようになった
のは何かきっかけがあったんですか?
満井さん:
読者をちゃんと意識し始めたのは、担当さんがついてくれてからです。
実は今まで話してきた「見せ場づくり」のこととか、投稿者時代は全部感覚で描いて
いました。「めくり」(注:ページをめくったタイミングでインパクトある絵や展開を用意するなど、
「ページめくり」を意識した構成のこと)の効果もデビュー後に知りました(笑)。
「この場面は、こう伝えたい」「こう読んでほしい」というのを、すしタロさんに
聞いてもらいながら、「じゃあこうしたら読む人にもっと伝わるよ」ってアドバイス
をもらって。
それまで感覚的だったものを、読者に伝えるための技術として意識するように
なりました。
もうひとつきっかけがあって…(苦笑)
デビュー作(「番犬ヒーロー」)を掲載していただいたとき、目次に憧れの
先生方と一緒に自分の名前が並んで、初めはすごく嬉しかったんです。でもその後は、
自分の作品の拙さを痛感しました。そうそうたる先生方の作品のなかで、少しでも
読者の興味を引きつけていかないと、簡単に読みとばされちゃうなと思って。
当時正直、自分の何がよくてデビューできたのかも、まったくわかってなかったし…
すしタロ:
私には「個性を持とう」と言われて……
満井さん:
ハイ(涙)。
――個性がない、と悩まれていたというのは意外です。
満井さん:
「個性」や「表現したいもの」を自覚したのは、『あたし、キスした。』を
始める直前でした。
デビュー後2作目の読み切り作品(「ダイスキのゆくえ」)が載った号が届いて、
自分の絵にひどくがっかりして……。下絵や鉛筆画のほうがよっぽどよく
描けてると思ってしまうくらい。
![]() |
作品中盤の見せ場として「部活に燃える男の子が試合中に背中で主人公にガッツ
ポーズを贈る」という青春ど真ん中のシーンを描いたんですけど、自分では描けたと
思っていた「熱さ」が全然画面から伝わっていない。それで、青春っぽさやキャラの
気持ちをもっと熱い絵で表現したい、とすごく思って。どうしたら読者に、より
「熱さ」が伝わる絵を描けるようになるんだろう? と考えるようになりました。
すしタロ:
その後すぐに、満井さんはフルデジタルだった作画をアナログに戻したんですよね。
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右がデジタル作画(「ダイスキのゆくえ」)
満井さん:
ええ。練習で描いたアナログ原稿を見ていただいたら、「こっちのほうが断然
“熱い”」ということになって。そこから絵に対する意識が変わり、綺麗さよりも
「熱さ」を重要視して描くようになりました。多少、線がガサガサしても、はみ
出しても、とにかく画面からキャラの「体温」や「熱量」が伝わることを最優先に
描こう! と。
すしタロ:
背景もリアリティーを出そうと、一緒にロケハンにも行きました。
満井さん:
すしタロさんと「青春の熱っぽさ」を描くのに、頭のなかで抽象的にしかイメージ
できない背景じゃリアリティーに欠ける…という話になって。『あたし、
キスした。』を始める前に、一緒に江ノ電のいくつかの駅で降りて写真を
たくさん撮りました。原稿では、リアルなその場所の空気感が伝わるように、スケッ
チする感覚でボールペン1本で描いています。
![]() |
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『あたし、キスした。』①では海や駅が印象的に描かれる。
――『あたし、キスした。』①の第1作が掲載されたときは、絵の変化に
編集部員もみんな驚きましたが、いまではこの絵こそ満井さんの作品のイメージに
なっているし、大きな魅力や個性のひとつになっていると思います!
満井さん:
そうなっていたら嬉しいです。
思い返すと私がデザートを投稿先に選んだのは、元々読者だったことと、いろんな
タイプ(作風)の先生がいらっしゃるので、私にも何かプロとしてやっていける
武器や、光る部分を、編集部の方々がきっと見つけてくださるはず…と思っていた
からなんです(笑)。結果的にはデビュー後、担当さんと一緒に試行錯誤していくなかで、
自分にもわかっていなかった「個性」を発見してもらったんだと思います。
――なるほど! 満井さんのこれからの作品がますます楽しみになってきました。
満井さん:
ありがとうございます。頑張ります(嬉)。
――それでは最後に、投稿者の方に向けてメッセージをお願いします!
満井さん:
私は今も、ネームは一発OKなんてなく、全ボツもあります。自信が持てなかったり、
悩んで手を止めてしまいがちですがそれはもったいないです。限られた時間のなかで、
目の前の一コマを埋めながら、どれだけ修正できたかという「もがき」が大事だと
感じています。漫画を描く楽しさをめいっぱい原稿にぶつけて、頑張ってください。
――今日はありがとうございました!


〆切は年2回(3月末・9月末)!!
作品募集中!!!!!

毎月開催! 一緒に育てる新人賞!!



作家名:満井春香
(第35回デザート新人まんが大賞 優秀賞)
★初コミックスまでの軌跡
☆デビュー&初掲載☆:
デザート2014年9月号
第35回 デザート新人まんが大賞 優秀賞
『番犬ヒーロー』
デビュー第1作:2014年THEデザート11月号掲載
読み切り『まっすぐ君へ』
第2作:2015年THEデザート1月号掲載
読み切り『ダイスキのゆくえ』
シリーズ連載スタート!
デザート 2015年5月号
『あたし、キスした。』シリーズ第1作「ボーダーライン」 掲載
以降シリーズ連載(不定期)中
★初コミックス発売★
2016年1月13日
『あたし、キスした。』①
現在発売中のデザート5月号
別冊ふろくpinkに
最新作『あたし、キスした。 ―花になる―』掲載!
★使っている道具
ペン先:髪の毛や目は丸ペン・NIKKO、輪郭や服はGペン・ゼブラ、背景ボールペン・ハイテックやシグノ
ホワイト:ぺんてる極細修正液、デリータホワイト
ベタ:アートカラーのコミックインク、デジタルのベタツール
枠線:デジタル直線ツール0.8mm
消しゴム:MONO(なるべく大きいサイズのもの)
カラー:ホルベインアーティストウォーターカラー(水彩絵具)
ドクターマーチン(カラーインク)
カラー用紙:水彩紙
デジタル
ソフト:コミックスタジオEX4
パソコン:マッキントッシュ
タブレット:ワコムintuos4
カラー:PhotoshopCS3
※作画(ペン入れ)はアナログ作業、仕上げはデジタル。
(第35回デザート新人まんが大賞 優秀賞)
★初コミックスまでの軌跡
☆デビュー&初掲載☆:
デザート2014年9月号
第35回 デザート新人まんが大賞 優秀賞
『番犬ヒーロー』
デビュー第1作:2014年THEデザート11月号掲載
読み切り『まっすぐ君へ』
第2作:2015年THEデザート1月号掲載
読み切り『ダイスキのゆくえ』
シリーズ連載スタート!
デザート 2015年5月号
『あたし、キスした。』シリーズ第1作「ボーダーライン」 掲載
以降シリーズ連載(不定期)中
★初コミックス発売★
2016年1月13日
『あたし、キスした。』①
現在発売中のデザート5月号
別冊ふろくpinkに
最新作『あたし、キスした。 ―花になる―』掲載!
★使っている道具
ペン先:髪の毛や目は丸ペン・NIKKO、輪郭や服はGペン・ゼブラ、背景ボールペン・ハイテックやシグノ
ホワイト:ぺんてる極細修正液、デリータホワイト
ベタ:アートカラーのコミックインク、デジタルのベタツール
枠線:デジタル直線ツール0.8mm
消しゴム:MONO(なるべく大きいサイズのもの)
カラー:ホルベインアーティストウォーターカラー(水彩絵具)
ドクターマーチン(カラーインク)
カラー用紙:水彩紙
デジタル
ソフト:コミックスタジオEX4
パソコン:マッキントッシュ
タブレット:ワコムintuos4
カラー:PhotoshopCS3
※作画(ペン入れ)はアナログ作業、仕上げはデジタル。