家政夫男子と憑依体質少女の新感覚ボーイ・ミーツ・ガール!
『おはよう、いばら姫』、最新4巻発売記念、
森野 萌さんスペシャルインタビュー公開!!
※このインタビューはコミックス4巻のネタバレを含みますので、
未読の方はご注意ください!(雑誌派の方は大丈夫!)
「このマンガがすごい!2016 オンナ編(宝島社)」の
ランクインも記憶に新しい『おはよう、いばら姫』。
その最新第4巻が7/13に発売するのを記念して、
作者の森野 萌さんにインタビューしちゃいました!
作り込まれたストーリーや、細部まで“意味”を持つ作画など、
読めば読むほど引き込まれる森野 萌ワールド。
その見どころや裏話を、先生ご本人に解説していただきました!
ぜひコミックスとあわせてお楽しみください♥
(取材・文/デザート編集部)
「おはよう、いばら姫」(4)
森野萌
――今回は『おはよう、いばら姫』4巻の発売を記念して、
最新刊の見どころはもちろん、今だから話せる4巻までの裏話についても
伺いたいと思っていますので、よろしくお願いいたします!
森野:
ちょっと緊張していますが……(汗)、がんばりますので、
どうぞよろしくお願いいたします!
――さっそくですが、家政夫バイトに精を出す男子高生・美郷 哲と、
彼のバイト先である空澤家の離れに閉じ込められて暮らす少女・空澤志津が
出会うことから始まる物語、『おはよう、いばら姫』。
本作は、もともと先生がイメージを温めていた作品だったそうですね?
森野:
はい、そうなんです。前々から物語の原案となるキャラクターと設定が
あって、いつか発表する機会があれば描きたいと思っていた作品でした。
――哲の家庭の事情、志津の憑依体質、志津と志津の両親との関係など
あちこちに伏線がはられていますよね。このお話は、連載開始当時、
森野先生のなかでどこまで展開を決めていたのでしょう?
森野:
結末…といいますか、私のなかでは最終話の落ちまで決めた状態で
スタートした作品です。
マンガにはいろいろな作り方があると思うのですが、
私はラストまで考えてから描き出すタイプだと思います。
ただ、要所要所にあるポイントは当初の構成からほとんど変わっていませんが、
そこに到達するまでの過程は、毎回試行錯誤しながら描いています。
ここまでにはってきた伏線が多いので、それを回収する大変さを
毎話毎話感じています(苦笑)。
――そうだったんですね(笑)。
ではネーム(※原稿に入る前のマンガの設計図のようなもの)は
どのように作っているんですか?
森野:
最初にプロット(※文字だけで、話の流れやキャラのセリフ・
行動などをまとめたもの)を作ったあと、私の場合は、
まず映画のように1シーン、1シーンをイメージとして浮かべています。
たとえばですが、キャラクターの引きの絵の後は、瞳のアップが入ってきて…と、
頭のなかに映像が流れてきて、それをネームとして絵に起こす感じです。
――そういえば、1話目のプロローグも、まるで映画のようでしたよね。
森野:
そういってもらえるとうれしいです。
よく漫画家は監督であり、脚本家であり、カメラマンでもある、
などと言われてますが、多分私もそういう視点で
作品作りをしているのかなと思います。
――最新4巻では、哲と志津が向かい合うシーンが見開きにわたって
大胆に描かれていて印象的でした。
森野:
あのシーンは一つの大きな見せ場にしたかったので、
「監督」目線で演出を考えるネーム作りのときは
とても楽しかったです(笑)。
一方で、「絵描き」として考えたときに楽しかったのは
志津の涙のシーンです。
ここは、哲を見る志津の目線での描写です。
志津の目が開いて、目の前にいる哲が涙でぼやけていて…、
といったつもりで描きました。
ここを描いているときは最高に楽しかったです(笑)!
――このシーンもそうですが、森野先生の作品はキャラクターの
感情を見せるシーンに目元や口元など、
パーツが効果的に使われていますよね。
森野:
そうですね。そういうシーンが多いことの理由の1つは、引きの絵と寄りの絵、
それぞれをバランスよく配置して、見開きごとにメリハリのあるページに
することを意識しているからだと思います。
――ほかにも理由があるんですか?
森野:
はい。たとえば、ある表情を一番効果的に見せるために、
そのシーンまでは顔全体を見せないで「ため」を作る意図だったり…。
あとは「負」の感情を表現したいときもでしょうか。
顔全体が見えないと、どこか不気味な感じが出せると思うので。
――たしかに一気に不穏な空気が流れますね…!
森野:
そうなんです! 逆に喜んでいるとき・うれしいときの感情を口元だけで
切り取ることは、あまり私はしないかもしれません。
――『おはよう、いばら姫』は手元の表現もとても豊かですが、
これも意識しているのでしょうか?
森野:
まだまだ理想には遠いんですが、“いい手”を描きたいとはいつも意識してます。
たとえば、怒っているときに手をギュッと握りしめるという表現はよくあると
思うのですが、「手」はそれ以外にもさまざまな感情を表現できると思うんです。
森野:
ちなみに…これは手ではないのですが、4巻で哲と話す志津が
足の裏をこするシーンがあって、ここは私のお気に入りです。
森野:
これは志津のなんだか落ち着かない様子を表現したかったんです。
体の動きには感情がのせられると思っているので、
そういうところにはこだわれたらいいなと思ってます。
たとえばですが、嘘をついていると目線が斜め上の方を向く、とか
よく聞きますが、演出にも生きてくると思うので、いつかそういった
心理学的な方面の勉強もしたいです(笑)。
――『おはよう、いばら姫』は、ビジュアルとしては志津という
1人の女の子に、4人のキャラクターが憑依していますよね。
描くのが難しいキャラクターはいますか?
森野:
しのぶさん…ですね(笑)。
しのぶさんは何があっても動じませんし、あまり感情の起伏がないキャラクターです。
“しのぶさんらしさ”を出したい!と思っても、どんなシーンでも声を荒げたり
激しく動いたりせず、常に一定のトーンなので、かえって演技をつけるのが難しいんです。
――先ほどのお話にあったような、 メリハリの部分も意識されるのでしょうか?
森野:
そうですね。しのぶさんは淡々と話をするような描写も多いので、
絵が単調なシーンにならないよう特に気にしています。
それからこれは技術的なことですが、
しのぶさんの髪型はちょっと難しいですね。
――というと?
森野:
しのぶさんのように頭のシルエットがはっきりと出てしまう
ハーフアップと、たとえば哲のように髪の毛の毛先を遊ばせた
ヘアスタイルとでは、後者のほうがバランスを取りやすいんです。
なので、描くのが地味に難しくて(汗)。
ちなみに、このハーフアップはしのぶさんの奥様が生前していた
ヘアスタイルをまねている…というイメージで描いています。
――志津ちゃんはどうでしょうか?
森野:
志津はいつも眠たげで瞼が重いイメージです。
また、瞳のハイライトは基本的に瞳の下半分だけに
入れるようにしています。
場面によって、意図的にそうしていない時もあるのですが。
――今後、志津ちゃんに憑依するキャラクターが
増える予定はあるのでしょうか?
森野:
この4人から増やす予定は今のところありません。
4巻では、少しだけしのぶさんの過去を描けたのですが、
今後はそのほかのキャラクターの過去にもお話の中で
触れていく予定です。
彼らがどんな人生を送って何のために志津の元に
集まってきたのか、注目していただけたらと思っています。
――コミックスのなかで、志津に憑依するキャラクターたちが
ノートに筆談で会話をするシーンがありますが、
あの文字は森野先生が書き分けているんですか?
森野:
実は、自分で書き分けると雰囲気がでないので、
全員別の人に書いてもらっているんです。
――そうなんですか! ちなみにどなたが…?
森野:
家族はもちろん、友人や編集部の方々など、文字の数だけたくさんの
人の手を借りました。ネタばらしをすると、志津の字は私で、
しのぶさんの文字は父で、ハルさんの文字は母、みれいさんは編集部の
若い女性の方に、カナトはなんと編集長のお子さんにお願いしています…。
――ちなみにこの寄せ書きシーン(3巻)の場面は?
森野:
担当さんが頼んで、講談社の男性編集の方が総出で描いてくださったと聞いています。
この作品は、毎回たくさんの方に協力してもらっていて本当にありがたいです。
そういえば、4巻で登場する、哲の友達の千尋が描いた絵があるのですが、
実はそれは私の友達が描いてくれています。
――この絵ですね(笑)!
森野:
はい。その友人には、以前にある国民的キャラクターを
描いてもらったことがあるのですが、そのときの絵がものすごい肩幅で(笑)。
いつかこの才能を世に出したい!と思っていたので、
今回「ぜひに!」と、お願いしました。
――このイラスト、4巻の帯にも採用されているとか…(笑)。
森野:
そうなんです! いきなりの単行本デビューを飾って
友人も驚いていました(笑)。
物語そのものがシリアスなので、こういう肩の力が抜けるシーンは
意識的に入れたいと思っています。
――いよいよ7月13日発売の『おはよう、いばら姫』4巻。
最新刊は「志津の成長」「友情」「恋」と、盛りだくさんの展開ですが、
作者として一番の見どころはどこでしょうか?
森野:
やはり、志津が「哀しい」という気持ちを獲得したことが
一番の見どころだと思っています。
1巻は、お人形さんを描くような気持ちでした。
2巻は自分で自分の気持ちを考えるようになるための準備段階。
そして3巻でようやく「喜び」を知った志津が、
4巻でついに知る、新しい感情です。
――1巻と4巻では、志津ちゃんの表情はまるで別人ですよね。
森野:
私自身、志津に対してはほかのキャラに対する目線とは
また少し違う、特別な想いがあります。
どこか親目線とでもいいますか…(笑)。
志津の描ける表情が一つ一つ増えていくことが、とてもうれしいんです。
これまでは哲を通して嬉しいとか喜びとか、プラスの感情ばかりを
学んできた志津ですが、そろそろそれだけではいけないと思いまして。
この涙のシーンは志津の人生においてすごく大切な瞬間にしたいと思って
気合を入れて描きましたので、注目していただければ幸いです。
――このシーンは私も涙腺決壊でした。
それは、読んでいる読者みんな同じ気持ちだと思います!
森野:
そうだとうれしいです。 あと、描き手としては夏祭りで哲が志津を
抱きしめているシーンが気に入っています。
――浴衣姿の志津ちゃんと哲のラブシーンを
見開きで描いた、これも見せ場ですよね。
森野:
実はこのシーンも裏話がありまして。
2人が抱き合うシーンをどうしてもこの角度から
描きたかったんです。でも資料がなくて…。
担当編集Y本:
編集部の女子2人で再現しました…(笑)。
森野:
志津と哲の身長差はあまりないので、
女性2人での再現というのがむしろぴったりで(笑)!
この作品は本当にいろんな方に助けてもらってできているんです。
ありがとうございます。
――キャラクターたちが想定外の動きで助けてくれる、
なんてこともあるんですか?
森野:
先ほどの映画のたとえで言うなら、キャラクターたちは「役者」で、
私にとって大切な仕事仲間だと思っています。
彼らは、基本的には監督の私の指示通り演じてくれるいい子たちばかりですが、
時々、プロットの時にはなかったのに、
下絵を描いているときに良いセリフがすっと出てきて、
「おお、いいこと言うね、君!」みたいなことはあります(笑)。
そういう意味でも、やっぱりマンガは1人でできるものじゃないんだ
ということを日々感じながら、作品作りをしています。
――1つ1つの絵、ストーリー、キャラクターに対して、
森野先生がどれだけ真摯に向き合って、
丁寧に作られているのかがお話をうかがってよくわかりました。
今日はありがとうございました!
最後になりますが、読者のみなさんにひと言メッセージをお願いします!
森野:
まずは4巻まで読んでくださっている方には感謝しかありません。
特殊な設定で、試行錯誤しながら描いている部分も多いのですが、
最新話まで見てくださっている方は、きっと続きが気になっていたり、
作品のどこかを好きになってくれたのだと思うと、
泣きそうなほどうれしいです。
その期待に少しでも応えられるような作品をこれからも
描いていきたいと思っています。
――ありがとうございました!
哲と志津の関係にも大きな展開があった最新4巻は7月13日発売!
お楽しみ4コママンガや描きおろしも、もちろん収録されています☆
さ・ら・に! 7月23日発売の『デザート』9月号では4巻の
続きからお楽しみいただけます♥
これからも応援どうぞよろしくお願いいたします!
「おはよう、いばら姫」(4)
森野萌
『おはよう、いばら姫』、最新4巻発売記念、
森野 萌さんスペシャルインタビュー公開!!
※このインタビューはコミックス4巻のネタバレを含みますので、
未読の方はご注意ください!(雑誌派の方は大丈夫!)
「このマンガがすごい!2016 オンナ編(宝島社)」の
ランクインも記憶に新しい『おはよう、いばら姫』。
その最新第4巻が7/13に発売するのを記念して、
作者の森野 萌さんにインタビューしちゃいました!
作り込まれたストーリーや、細部まで“意味”を持つ作画など、
読めば読むほど引き込まれる森野 萌ワールド。
その見どころや裏話を、先生ご本人に解説していただきました!
ぜひコミックスとあわせてお楽しみください♥
(取材・文/デザート編集部)
『おはよう、いばら姫』はこうして作られる!
「おはよう、いばら姫」(4)
森野萌
――今回は『おはよう、いばら姫』4巻の発売を記念して、
最新刊の見どころはもちろん、今だから話せる4巻までの裏話についても
伺いたいと思っていますので、よろしくお願いいたします!
森野:
ちょっと緊張していますが……(汗)、がんばりますので、
どうぞよろしくお願いいたします!
――さっそくですが、家政夫バイトに精を出す男子高生・美郷 哲と、
彼のバイト先である空澤家の離れに閉じ込められて暮らす少女・空澤志津が
出会うことから始まる物語、『おはよう、いばら姫』。
本作は、もともと先生がイメージを温めていた作品だったそうですね?
森野:
はい、そうなんです。前々から物語の原案となるキャラクターと設定が
あって、いつか発表する機会があれば描きたいと思っていた作品でした。
――哲の家庭の事情、志津の憑依体質、志津と志津の両親との関係など
あちこちに伏線がはられていますよね。このお話は、連載開始当時、
森野先生のなかでどこまで展開を決めていたのでしょう?
森野:
結末…といいますか、私のなかでは最終話の落ちまで決めた状態で
スタートした作品です。
マンガにはいろいろな作り方があると思うのですが、
私はラストまで考えてから描き出すタイプだと思います。
ただ、要所要所にあるポイントは当初の構成からほとんど変わっていませんが、
そこに到達するまでの過程は、毎回試行錯誤しながら描いています。
ここまでにはってきた伏線が多いので、それを回収する大変さを
毎話毎話感じています(苦笑)。
――そうだったんですね(笑)。
ではネーム(※原稿に入る前のマンガの設計図のようなもの)は
どのように作っているんですか?
森野:
最初にプロット(※文字だけで、話の流れやキャラのセリフ・
行動などをまとめたもの)を作ったあと、私の場合は、
まず映画のように1シーン、1シーンをイメージとして浮かべています。
たとえばですが、キャラクターの引きの絵の後は、瞳のアップが入ってきて…と、
頭のなかに映像が流れてきて、それをネームとして絵に起こす感じです。
――そういえば、1話目のプロローグも、まるで映画のようでしたよね。
森野:
そういってもらえるとうれしいです。
よく漫画家は監督であり、脚本家であり、カメラマンでもある、
などと言われてますが、多分私もそういう視点で
作品作りをしているのかなと思います。
――最新4巻では、哲と志津が向かい合うシーンが見開きにわたって
大胆に描かれていて印象的でした。
森野:
あのシーンは一つの大きな見せ場にしたかったので、
「監督」目線で演出を考えるネーム作りのときは
とても楽しかったです(笑)。
一方で、「絵描き」として考えたときに楽しかったのは
志津の涙のシーンです。
ここは、哲を見る志津の目線での描写です。
志津の目が開いて、目の前にいる哲が涙でぼやけていて…、
といったつもりで描きました。
ここを描いているときは最高に楽しかったです(笑)!
――このシーンもそうですが、森野先生の作品はキャラクターの
感情を見せるシーンに目元や口元など、
パーツが効果的に使われていますよね。
森野:
そうですね。そういうシーンが多いことの理由の1つは、引きの絵と寄りの絵、
それぞれをバランスよく配置して、見開きごとにメリハリのあるページに
することを意識しているからだと思います。
――ほかにも理由があるんですか?
森野:
はい。たとえば、ある表情を一番効果的に見せるために、
そのシーンまでは顔全体を見せないで「ため」を作る意図だったり…。
あとは「負」の感情を表現したいときもでしょうか。
顔全体が見えないと、どこか不気味な感じが出せると思うので。
――たしかに一気に不穏な空気が流れますね…!
森野:
そうなんです! 逆に喜んでいるとき・うれしいときの感情を口元だけで
切り取ることは、あまり私はしないかもしれません。
――『おはよう、いばら姫』は手元の表現もとても豊かですが、
これも意識しているのでしょうか?
森野:
まだまだ理想には遠いんですが、“いい手”を描きたいとはいつも意識してます。
たとえば、怒っているときに手をギュッと握りしめるという表現はよくあると
思うのですが、「手」はそれ以外にもさまざまな感情を表現できると思うんです。
森野:
ちなみに…これは手ではないのですが、4巻で哲と話す志津が
足の裏をこするシーンがあって、ここは私のお気に入りです。
森野:
これは志津のなんだか落ち着かない様子を表現したかったんです。
体の動きには感情がのせられると思っているので、
そういうところにはこだわれたらいいなと思ってます。
たとえばですが、嘘をついていると目線が斜め上の方を向く、とか
よく聞きますが、演出にも生きてくると思うので、いつかそういった
心理学的な方面の勉強もしたいです(笑)。
描くのが一番難しいのは…意外なあの人!?
――『おはよう、いばら姫』は、ビジュアルとしては志津という
1人の女の子に、4人のキャラクターが憑依していますよね。
描くのが難しいキャラクターはいますか?
森野:
しのぶさん…ですね(笑)。
しのぶさんは何があっても動じませんし、あまり感情の起伏がないキャラクターです。
“しのぶさんらしさ”を出したい!と思っても、どんなシーンでも声を荒げたり
激しく動いたりせず、常に一定のトーンなので、かえって演技をつけるのが難しいんです。
――先ほどのお話にあったような、 メリハリの部分も意識されるのでしょうか?
森野:
そうですね。しのぶさんは淡々と話をするような描写も多いので、
絵が単調なシーンにならないよう特に気にしています。
それからこれは技術的なことですが、
しのぶさんの髪型はちょっと難しいですね。
――というと?
森野:
しのぶさんのように頭のシルエットがはっきりと出てしまう
ハーフアップと、たとえば哲のように髪の毛の毛先を遊ばせた
ヘアスタイルとでは、後者のほうがバランスを取りやすいんです。
なので、描くのが地味に難しくて(汗)。
ちなみに、このハーフアップはしのぶさんの奥様が生前していた
ヘアスタイルをまねている…というイメージで描いています。
――志津ちゃんはどうでしょうか?
森野:
志津はいつも眠たげで瞼が重いイメージです。
また、瞳のハイライトは基本的に瞳の下半分だけに
入れるようにしています。
場面によって、意図的にそうしていない時もあるのですが。
――今後、志津ちゃんに憑依するキャラクターが
増える予定はあるのでしょうか?
森野:
この4人から増やす予定は今のところありません。
4巻では、少しだけしのぶさんの過去を描けたのですが、
今後はそのほかのキャラクターの過去にもお話の中で
触れていく予定です。
彼らがどんな人生を送って何のために志津の元に
集まってきたのか、注目していただけたらと思っています。
男性編集を総動員したシーンとは…?
――コミックスのなかで、志津に憑依するキャラクターたちが
ノートに筆談で会話をするシーンがありますが、
あの文字は森野先生が書き分けているんですか?
森野:
実は、自分で書き分けると雰囲気がでないので、
全員別の人に書いてもらっているんです。
――そうなんですか! ちなみにどなたが…?
森野:
家族はもちろん、友人や編集部の方々など、文字の数だけたくさんの
人の手を借りました。ネタばらしをすると、志津の字は私で、
しのぶさんの文字は父で、ハルさんの文字は母、みれいさんは編集部の
若い女性の方に、カナトはなんと編集長のお子さんにお願いしています…。
――ちなみにこの寄せ書きシーン(3巻)の場面は?
森野:
担当さんが頼んで、講談社の男性編集の方が総出で描いてくださったと聞いています。
この作品は、毎回たくさんの方に協力してもらっていて本当にありがたいです。
そういえば、4巻で登場する、哲の友達の千尋が描いた絵があるのですが、
実はそれは私の友達が描いてくれています。
――この絵ですね(笑)!
森野:
はい。その友人には、以前にある国民的キャラクターを
描いてもらったことがあるのですが、そのときの絵がものすごい肩幅で(笑)。
いつかこの才能を世に出したい!と思っていたので、
今回「ぜひに!」と、お願いしました。
――このイラスト、4巻の帯にも採用されているとか…(笑)。
森野:
そうなんです! いきなりの単行本デビューを飾って
友人も驚いていました(笑)。
物語そのものがシリアスなので、こういう肩の力が抜けるシーンは
意識的に入れたいと思っています。
志津が新たな感情を手にする、最新4巻!
――いよいよ7月13日発売の『おはよう、いばら姫』4巻。
最新刊は「志津の成長」「友情」「恋」と、盛りだくさんの展開ですが、
作者として一番の見どころはどこでしょうか?
森野:
やはり、志津が「哀しい」という気持ちを獲得したことが
一番の見どころだと思っています。
1巻は、お人形さんを描くような気持ちでした。
2巻は自分で自分の気持ちを考えるようになるための準備段階。
そして3巻でようやく「喜び」を知った志津が、
4巻でついに知る、新しい感情です。
――1巻と4巻では、志津ちゃんの表情はまるで別人ですよね。
森野:
私自身、志津に対してはほかのキャラに対する目線とは
また少し違う、特別な想いがあります。
どこか親目線とでもいいますか…(笑)。
志津の描ける表情が一つ一つ増えていくことが、とてもうれしいんです。
これまでは哲を通して嬉しいとか喜びとか、プラスの感情ばかりを
学んできた志津ですが、そろそろそれだけではいけないと思いまして。
この涙のシーンは志津の人生においてすごく大切な瞬間にしたいと思って
気合を入れて描きましたので、注目していただければ幸いです。
――このシーンは私も涙腺決壊でした。
それは、読んでいる読者みんな同じ気持ちだと思います!
森野:
そうだとうれしいです。 あと、描き手としては夏祭りで哲が志津を
抱きしめているシーンが気に入っています。
――浴衣姿の志津ちゃんと哲のラブシーンを
見開きで描いた、これも見せ場ですよね。
森野:
実はこのシーンも裏話がありまして。
2人が抱き合うシーンをどうしてもこの角度から
描きたかったんです。でも資料がなくて…。
担当編集Y本:
編集部の女子2人で再現しました…(笑)。
森野:
志津と哲の身長差はあまりないので、
女性2人での再現というのがむしろぴったりで(笑)!
この作品は本当にいろんな方に助けてもらってできているんです。
ありがとうございます。
――キャラクターたちが想定外の動きで助けてくれる、
なんてこともあるんですか?
森野:
先ほどの映画のたとえで言うなら、キャラクターたちは「役者」で、
私にとって大切な仕事仲間だと思っています。
彼らは、基本的には監督の私の指示通り演じてくれるいい子たちばかりですが、
時々、プロットの時にはなかったのに、
下絵を描いているときに良いセリフがすっと出てきて、
「おお、いいこと言うね、君!」みたいなことはあります(笑)。
そういう意味でも、やっぱりマンガは1人でできるものじゃないんだ
ということを日々感じながら、作品作りをしています。
――1つ1つの絵、ストーリー、キャラクターに対して、
森野先生がどれだけ真摯に向き合って、
丁寧に作られているのかがお話をうかがってよくわかりました。
今日はありがとうございました!
最後になりますが、読者のみなさんにひと言メッセージをお願いします!
森野:
まずは4巻まで読んでくださっている方には感謝しかありません。
特殊な設定で、試行錯誤しながら描いている部分も多いのですが、
最新話まで見てくださっている方は、きっと続きが気になっていたり、
作品のどこかを好きになってくれたのだと思うと、
泣きそうなほどうれしいです。
その期待に少しでも応えられるような作品をこれからも
描いていきたいと思っています。
――ありがとうございました!
哲と志津の関係にも大きな展開があった最新4巻は7月13日発売!
お楽しみ4コママンガや描きおろしも、もちろん収録されています☆
さ・ら・に! 7月23日発売の『デザート』9月号では4巻の
続きからお楽しみいただけます♥
これからも応援どうぞよろしくお願いいたします!
「おはよう、いばら姫」(4)
森野萌