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鈴山もりインタビュー

「デザート」で活躍中のまんが家さんに、デビューからこれまでを伺うインタビューシリーズ。
第3弾は、「デザート」12月号からはじまった新連載『大家さんちの光くん』も大好評の鈴山もりさん。
対面持ち込みからスタートしたキャリアや、
ギリギリまでこだわり抜いた新連載の制作過程をお聞かせいただきました!
あえて選んだ“対面持ち込み”

ーー鈴山さんは、まずは「デザート」に対面持ち込みをされたそうですね?

はい、そうです。幼い頃からまんが家を目指していて、ジャンルは“少女まんが”がいいと決めていました。一時期、他誌へ持ち込みをしていたこともあったのですが、しばらくお休みしているうちにだいぶ期間が空いてしまって。久しぶりの作品作りで、早く評価やアドバイスがほしかったこともあり、投稿ではなく持ち込みをすることにしました。
ただ、自分の作風がどの雑誌に合っているのかがわからなかったので、少女まんが誌を見るために友人と書店に行ったんです。その際に気になったのが「デザート」でした。

ーーどんなところが、目に留まったのでしょうか?

主人公たちが高校生もいれば、大学生や社会人もいて世代の幅が広かったことと、さまざまな絵柄の作品が掲載されていたことです。なかでも、連載作家陣に金田一蓮十郎先生がいらしたのが決定打でした。実は当時、「デザート」は読んでいなかったんです。ただ、金田一先生が他誌で連載していた『ジャングルはいつもハレのちグゥ』が好きだったので、少年誌でキャリアをスタートされた先生も活躍されている少女まんが誌、ということに魅力を感じました。それで、すぐに編集部に電話をかけて、対面での持ち込みをお願いしました。

ーー当時、覚えていらっしゃることはありますか?

だいぶ前なので具体的なコメントは覚えていないのですが、「悔しい!」と思った記憶はないので、どのアドバイスも納得だったんじゃないかなと思います(笑)。ただ、何より安心できたのは、その場で「担当につきます」と言ってもらえたことでした。

ーーそこから、担当編集と一緒にデザート新人まんが大賞に投稿する作品作りを始めたんですね。編集者とのやりとりで、印象的だったことはありますか?

「セリフ量は少なく」、「コマ割りは整理して」といったアドバイスです。指摘に沿って作品を直していくと、どんどんブラッシュアップされていくことが自分でもわかって、とても感動したことをいまも覚えています。


打ち合わせを楽しめるようになったワケは…

ーーそうして完成した『そしてとりどり』で、早くも第48回デザート新人まんが大賞の優秀賞を受賞してデビューが決定。約2年後にはシリーズ連載『この教室に、すきな人がいます。』がはじまりました。連載を掴み取るまでに、取り組んだことはありますか?



デビューが決まった直後の「デザート」2021年2月号に掲載



デビュー前よりも、デビュー後のほうがはるかに勉強している気がします。デビューするまでは、とにかく“担当さんに言われたことを反映する!”という感じだったのですが、デビュー後はまんがの見方も変わりました。読むジャンルもさまざまで、少女まんがはもちろんですが、少年系のバトルものも手にするようになりました。バトルものの作品からは、印象的なコマ割りを勉強しています。まんがを読むことが、どんどん楽しくなっている気がします。

担当編集:デビュー後から鈴山さんを担当していますが、コマ割りの進化は本当にすごいと思います!

ーー鈴山さんの作品は、ときめき感や、眩しくてみずみずしい青春をリアルな感覚で描かれている印象があります。そのために、意識していることはありますか?

その“みずみずしさ”が自分ではわからないのですが、少し前まで会社勤めをしていて、最寄り駅に学校があったので、通勤中などに学生さんたちをさりげなく観察させてもらえたことには感謝しています。ただ、自分としては少女まんがならではの “ときめきシーン”には苦手意識があるんです。本当はダイナミックなキュンシーンを描きたいのですが、少し地味になってしまって…。

担当編集:鈴山さんはそうおっしゃっていますが、ときめきシーンに入る前は風が吹いたり光が差したりと、特に演出をきかせていると感じています。結果的に主人公たちの感情の丁寧な描写につながり、そのシーンがまるで目の前で起きているようなみずみずしさにつながっているんじゃないかなと。



『この教室に、すきな人がいます。』のEP.4「すきな人がいます」収録のひとコマ



感情の丁寧な描写と、ダイナミックなキュンシーン、どちらも描けたらいいに決まっているので、後者はいま勉強しているところです。連載中の『大家さんちの光くん』でも、まずは光のちょっとした仕草ですばるをときめかせていきたいなと思っています。

ーー鈴山さんは、2024年1月号の別冊ふろく「少女漫画×現代短歌」のアンソロジーにも参加されていますが、本誌以外にも掲載チャンスがあることにメリットは感じましたか?



2024年1月号の別冊ふろく「少女漫画×現代短歌」のアンソロジーにも参加



はい、感じました。仕事があるという点はもちろんですが、技術力を向上するためには数をこなす必要があると感じています。それに、掲載されて初めて気づいたこともありました。私の絵は線が細めだったのですが、いざほかの作品と並んで載ったのを見たら「弱いな」と感じて、雑誌に合わせて調整することも必要だなと思いました。

ーー鈴山さんにとって、担当編集者とはどういう存在ですか?

まずは感謝です。編集さんがいるから、みなさんに見ていただける作品が作れますし、私にとって必要不可欠な存在です。

ーー「デザート」の編集者の印象はどうでしょうか?

これまでの担当さんはどなたも冷静に作品を見て意見をくださって、とても信頼しています。最初は自分と作品が直結していて、作品に対して「こうしたほうがいいんじゃないか」と言われることに傷ついたこともあった気がするんです。でも、自分が否定されているわけじゃないし、作品をよくするためだとわかってからは、どんなアドバイスも前向きに聞けるようになりました。いまは担当さんが2人いるのですが、打ち合わせが毎回楽しいです。


高熱で寝込んだ時も描き続けた光のビジュアル

ーー続いては、10月号からはじまった新連載についてもお聞かせください。『大家さんちの光くん』は、どうやって作っていったのでしょうか?





当初は光が後輩で、すばるを追いかけてくるという設定を考えていたのですが、うまくいかず…。打ち合わせをしては案を出し、ネームを描いてはボツを繰り返していたので、8割迷走、2割進展だった気がします。ただ、「光がすばるの家にいきなり挨拶にくる」というシーンが思い浮かび、そこから今の形ができあがりました。

ーー準備する過程で、印象に残っていることはありますか?

納得まで粘りたかったので、キャラもタイトルもギリギリまで決まりませんでした。なかでも難航したのは、光のビジュアル作りです。高熱が出て寝込んだときも、光だけは描き続けました。内面が優しい子なので外見にはツンとしたスパイスがほしくて、そのバランスが特に難しかったです。髪色はベタ(黒く塗ること)にすることも考えたのですが、最終的にキャラクター性にマッチしたトーンを採用しました。すばるの顔も華やかに見えるように、これまでの自分の絵柄のバランスからけっこう変えています。



1話目冒頭、すばるの登場シーン(左)、
本作のお話が固まるきっかけとなった、光がすばるを訪ねてくるシーン(右)



ーーキャラクターの作画は、どうやって自分のものにしていくのでしょうか?

私の場合は、いいなと思うバランスの顔の写真(実写)を繰り返し模写しながら、自分の絵柄に落とし込んでいきます。好きなバランスを、自分に染み込ませていくようなイメージです。光とすばるも、一度つかんでからは二人がどんな角度を向いても、彼らとして描けるようになりました。

ーー鈴山さんが、作品作りで大切にされているのはどんなことですか?

読者のみなさんを、不快にさせないことです。感覚的な部分が大きいのですが、このセリフが誰かを排除していないかという点は、特に気をつけたいと思っています。
あとは“わかりやすさ”です。たとえば、1話の中にメインとなるAというテーマを設けていたとします。でも、メインっぽく見えるBというテーマも混在させてしまうと、伝えたいことがぼやけてしまうんですよね。つい、いろいろと盛り込みたくなってしまうのですが、この点は、編集さんの力も借りながら毎話ブラッシュアップしています。

ーー新連載について、注目して見てほしいポイントを教えてください

まずは、すばると光の掛け合いにほっこりしてもらえたらと思います。また、現時点では誰も恋をしていないのですが、これからどうなっていくのかを楽しみにしていただけたら嬉しいです!


すばると光、2人のテンポのいい会話のキャッチボールに注目を♡



ーーこれからまんが家を目指す方へのアドバイスをいただけますでしょうか

どんな事にも当てはまりますが、やればやるだけ自分の力の無さや、高い壁が見えてくると思うんです。好きな事なら尚更それを感じ、心がしんどい時があると思います。でも、そこから学べることが必ずありますので、少し落ち込んだら開き直って、また作品を作りましょう。少しだけでも自分がいい方向に成長しているはずです。
…と偉そうに言っていますが、これは最近、私自身も感じている事です。一緒に頑張りましょう。

ーー最後になりますが、読者の方へのメッセージもお願いします!

鈴山もりです。今後も、すこしでも楽しんで頂けるような作品を作っていけるよう精進してまいります。どうぞよろしくお願いいたします!

ーー今日はありがとうございました!



『大家さんちの光くん』作品紹介ページ



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