TVアニメ『ゆびさきと恋々』監督・村野佑太さん×脚本家・米内山陽子さんインタビュー
23/11/24
放送開始が迫ってきたTVアニメ『ゆびさきと恋々』ですが、
なんと村野佑太監督と、脚本家の米内山陽子さんのSP対談が実現!
約3年前から準備が進められていたという本作への想いや意気込み、
見どころをお話しいただきました!
▼お話を聞いたのはこのお二人!▼
村野佑太監督
米内山陽子さん
なんと村野佑太監督と、脚本家の米内山陽子さんのSP対談が実現!
約3年前から準備が進められていたという本作への想いや意気込み、
見どころをお話しいただきました!
▼お話を聞いたのはこのお二人!▼
村野佑太監督
米内山陽子さん
――お二人の『ゆびさきと恋々』の感想からお聞かせいただけますでしょうか
村野監督(以下、村):
僕が抱いていた少女マンガのイメージよりも、かなり先をいっている作品だなと感じました。まず、主人公の雪は耳が聞こえないことを枷にすることなく、物語のスタート地点からすごくポジティブですよね。それに音が聞こえないことを可視化する表現を見たときに、これはものすごいことに挑戦しようとしているマンガなんだなと一気に引き込まれたというのが最初の印象です。
米内山さん(以下、米):
私は両親ともに耳が聞こえないので、その世界がすごく身近です。これまでも聴覚障がい者を題材にした作品を何度か目にしてきたのですが、きちんと取り扱われていないなと感じたり、お涙頂戴の部分ばかりが強調された作品になっていたりすることも多くて、まずは警戒してしまう気持ちがあったんです。でも、『ゆびさきと恋々』は手話には「日本手話」と「日本語対応手話」があること、本作では「日本語対応手話を主に使用している」ということが明記されているのを見て、信頼できる作品だなと思いました。
――アニメを手がけることになったのは、どういう経緯だったのでしょうか
村:3年前に「月刊少年マガジン」で連載していた『かくしごと』のアニメで監督をさせてもらっていて、その際に講談社の方から「ぜひやってほしい少女マンガ作品があるんだけど、興味ありますか?」と言われたんです。個人的にも少女マンガのアニメ化はどこかのタイミングで一度はやってみたいと思っていたので、即答で「あります」とお答えして、単行本を読んだら見事にハマりました(笑)。
米:私は脚本家であるのと同時に舞台手話通訳や手話指導のお仕事もしていて、そのことは名刺にも書いているので、早々に脚本を担当しませんかとお声掛けいただきました。作品は以前から読んでいて、とても魅力を感じていたので「絶対に私がやりたい!」とすぐにお引き受けしました。
――作品作りを進める過程で、お二人の間ではどんなやりとりがあったのでしょうか
村:まずは手話については誠心誠意、噓をつかずに向き合っていかなければいけないというのは、僕も米内山さんも最初から共通認識としてありました。
米:そうですね。
村:ただ、一方で本作はハウツーものではないので、“リアル”か“少女マンガ”かを選択しないといけない場合は、少女マンガを優先させたいというビジョンは米内山さんにも伝えましたし、アニメ化に着手する前段階で森下suu先生にもお話しして、OKをいただいています。
米:聴覚障がい者と聞くとさまざまなイメージを持つかもしれませんが、『ゆびさきと恋々』は素敵な人に出会って心が揺れて、恋をして、世界を広げていく勇気を描いているところが素敵な作品だと思うので、そこはとても大切にしました。
村:あと、原作は月刊誌での連載という特性上、どうしても雪と逸臣の関係に重きがあると思うのですが、アニメではりんや京弥、心、エマといった仲間たちもしっかり描いて青春群像劇のようにしたいということも最初から決めていました。
米:雪と逸臣はもちろんですが、 ほかの子たちもみんな魅力的ですもんね!
村:いま編集作業中ですが、スタッフ間でもよく「誰が好き?」という話になります(笑)。「私は心ちゃん派!」「俺は桜志」と、みんなさまざまで。
米:桜志は特に人気が高い印象ですよね(笑)。
――制作で難航したのはどんなところでしょう?
村:どこで話数をまたぐかという切りどころと、エピソードの取捨選択…これは本当に悩みました。アニメ化するからには、アニメとして1話1話に意味があって、見どころが必要になるので。
米:確かに、この回では何が起きて何が変わるのかは、かなり細かく見ながら作っていきましたね。
村:『ゆびさきと恋々』は、キャラクターたちの感情線を細やかに描いている作品なんですよね。でもすべてを盛り込むことはできないので、原作と印象が変わらないように丁寧に再構築する必要があって。その作業は、米内山さんも苦労したと思います。
米:そう言われれば、そうだったかもしれない…(笑)。
村:今回は、森下先生にお願いして、マキロさん(原作)となちやんさん(作画)にとって思い入れのあるシーンと、原作ファンの方から反響がよかったシーンすべてにフセンを貼っていただいて、そのシーンはしっかりと反映しながら作っていきました。
――本作で村野監督は全話数の絵コンテをご自身で切っていますが、意識されたことはありますか?
村:この作品に限ったことではないのですが、僕自身のルールとしてアクションとして動くシーンよりも、キャラクターの心が動いた瞬間をしっかり汲み取ることを大切にしています。その積み重ねがキャラクターたちへの共感や、作品に対する情緒になると思うからです。しかも今回は少女マンガなので、その部分は今まで以上に大切にしました。
僕は、『ゆびさきと恋々』はほぼ全てのキャラクターが逸臣によって、何かしらの影響を受けて、展開を迎えていく作品だなと思っていて。そんな逸臣は、細かい所作までかっこよくないといけないと思うんです。だから、彼が振り向くときに何枚の絵で振り向くべきなのか、瞬きはどれくらいのペースであるべきなのか、といった部分まで現場に嫌がられるくらいチェックしました(笑)。
――そこまで見るんですね…!
村:それこそ、雪と見つめ合っている逸臣の瞳の中にどれくらい雪が映り込んでいるか、雪を見つめる逸臣のハイライトは揺れているのか、いないのか、ということまでこだわりました。やっぱり視聴者は、雪の視点で逸臣を見る方が多いと思うんですよね。そう思ったときに、どんな瞳で見つめていてほしいのかという部分はかなり繊細に調整しました。
米:アニメを見て、私もめちゃくちゃドキドキしました! 何より、すべてのカットに意味があるので、目が離せなくて。隅々まで見ていただきたいと思いますし、私自身も何度も見たいなと思っています。
――米内山さんが、セリフやモノローグで意識されたのはどんなことでしょうか?
米:『ゆびさきと恋々』は、心の解像度がとても高い作品だと思うんですよね。なので、森下先生が描いている気持ちの流れを大切にする、というのが一番ですね。それ以外で気を遣ったのはト書きなんです。雪は、物事を見ないとわからないですよね。後ろから声をかけられてもわからないし、相手も雪が自分を見ていることをわかってからじゃないと喋らない、ということをしっかり守らないと、作品として配慮がなく見えてしまうと思うんです。それは絶対に避けたかったので、雪はもちろん、それぞれのキャラクターの視線がいまどこにあるのかということを意識しました。
――雪には聴覚障がいがありますが、だからこそ挑戦できた表現はあるのでしょうか
村:映像面では、冒頭でもお話しした通り原作を読んで衝撃を受けた、耳が聞こえないということの可視化ですね。たとえば聴覚障がい者が登場する際の表現として、本人の周囲だけピントをぼかして、周りの情報が不明瞭であることを表現するような描写ってあると思うんです。でも、それには違和感を覚えていたんですよね。それで米内山さんにも話を聞いて。
米:耳が聞こえない分、視覚がすごく発達していて、視野もかなり広いという話をしたんですよね。
村:そうそう。ということは、ピントをぼかすんじゃなくてむしろ全部にピントが合っている世界なんだなと。雪については、そういう集中力の高い世界。一方で、ほかのキャラクターの背景はフォーカスをぼかしていることも多くて、雪の世界との差をつけています。そして、その2つの世界が最終的に混ざり合う最終回になるので、楽しみにしていていただければと思います。
米:逆に私は聞こえないから、というのはないですね。気持ちが動いているということが一番大事なことなので、雪や逸臣がいま何を思っていて、どうしてこういう行動を起こすのかということをいつも通り大事に考えて作品を作っていきました。
――原作ファンに向けてメッセージをお願いします
村:森下先生にもたくさんご協力いただき、原作チームとアニメチームが一緒になって一つの作品を作ろうとしている、とても風通しのいい現場です。原作が持つ魅力をしっかりと生かしながら作った作品になっていますので、アニメを通して、もっともっと雪や逸臣を好きになってもらえたらと思います!
米:必ずや、見た方の世界を広げてくれる作品だなと感じています。あとは、とにかくめちゃくちゃいいので、見てほしい! これに尽きます(笑)。ぜひ1月からの放送をお楽しみください!
『ゆびさきと恋々』森下suu
①巻〜 絶賛発売中!
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作品紹介ページ
村野監督(以下、村):
僕が抱いていた少女マンガのイメージよりも、かなり先をいっている作品だなと感じました。まず、主人公の雪は耳が聞こえないことを枷にすることなく、物語のスタート地点からすごくポジティブですよね。それに音が聞こえないことを可視化する表現を見たときに、これはものすごいことに挑戦しようとしているマンガなんだなと一気に引き込まれたというのが最初の印象です。
米内山さん(以下、米):
私は両親ともに耳が聞こえないので、その世界がすごく身近です。これまでも聴覚障がい者を題材にした作品を何度か目にしてきたのですが、きちんと取り扱われていないなと感じたり、お涙頂戴の部分ばかりが強調された作品になっていたりすることも多くて、まずは警戒してしまう気持ちがあったんです。でも、『ゆびさきと恋々』は手話には「日本手話」と「日本語対応手話」があること、本作では「日本語対応手話を主に使用している」ということが明記されているのを見て、信頼できる作品だなと思いました。
――アニメを手がけることになったのは、どういう経緯だったのでしょうか
村:3年前に「月刊少年マガジン」で連載していた『かくしごと』のアニメで監督をさせてもらっていて、その際に講談社の方から「ぜひやってほしい少女マンガ作品があるんだけど、興味ありますか?」と言われたんです。個人的にも少女マンガのアニメ化はどこかのタイミングで一度はやってみたいと思っていたので、即答で「あります」とお答えして、単行本を読んだら見事にハマりました(笑)。
米:私は脚本家であるのと同時に舞台手話通訳や手話指導のお仕事もしていて、そのことは名刺にも書いているので、早々に脚本を担当しませんかとお声掛けいただきました。作品は以前から読んでいて、とても魅力を感じていたので「絶対に私がやりたい!」とすぐにお引き受けしました。
――作品作りを進める過程で、お二人の間ではどんなやりとりがあったのでしょうか
村:まずは手話については誠心誠意、噓をつかずに向き合っていかなければいけないというのは、僕も米内山さんも最初から共通認識としてありました。
米:そうですね。
村:ただ、一方で本作はハウツーものではないので、“リアル”か“少女マンガ”かを選択しないといけない場合は、少女マンガを優先させたいというビジョンは米内山さんにも伝えましたし、アニメ化に着手する前段階で森下suu先生にもお話しして、OKをいただいています。
米:聴覚障がい者と聞くとさまざまなイメージを持つかもしれませんが、『ゆびさきと恋々』は素敵な人に出会って心が揺れて、恋をして、世界を広げていく勇気を描いているところが素敵な作品だと思うので、そこはとても大切にしました。
村:あと、原作は月刊誌での連載という特性上、どうしても雪と逸臣の関係に重きがあると思うのですが、アニメではりんや京弥、心、エマといった仲間たちもしっかり描いて青春群像劇のようにしたいということも最初から決めていました。
米:雪と逸臣はもちろんですが、 ほかの子たちもみんな魅力的ですもんね!
村:いま編集作業中ですが、スタッフ間でもよく「誰が好き?」という話になります(笑)。「私は心ちゃん派!」「俺は桜志」と、みんなさまざまで。
米:桜志は特に人気が高い印象ですよね(笑)。
――制作で難航したのはどんなところでしょう?
村:どこで話数をまたぐかという切りどころと、エピソードの取捨選択…これは本当に悩みました。アニメ化するからには、アニメとして1話1話に意味があって、見どころが必要になるので。
米:確かに、この回では何が起きて何が変わるのかは、かなり細かく見ながら作っていきましたね。
村:『ゆびさきと恋々』は、キャラクターたちの感情線を細やかに描いている作品なんですよね。でもすべてを盛り込むことはできないので、原作と印象が変わらないように丁寧に再構築する必要があって。その作業は、米内山さんも苦労したと思います。
米:そう言われれば、そうだったかもしれない…(笑)。
村:今回は、森下先生にお願いして、マキロさん(原作)となちやんさん(作画)にとって思い入れのあるシーンと、原作ファンの方から反響がよかったシーンすべてにフセンを貼っていただいて、そのシーンはしっかりと反映しながら作っていきました。
――本作で村野監督は全話数の絵コンテをご自身で切っていますが、意識されたことはありますか?
村:この作品に限ったことではないのですが、僕自身のルールとしてアクションとして動くシーンよりも、キャラクターの心が動いた瞬間をしっかり汲み取ることを大切にしています。その積み重ねがキャラクターたちへの共感や、作品に対する情緒になると思うからです。しかも今回は少女マンガなので、その部分は今まで以上に大切にしました。
僕は、『ゆびさきと恋々』はほぼ全てのキャラクターが逸臣によって、何かしらの影響を受けて、展開を迎えていく作品だなと思っていて。そんな逸臣は、細かい所作までかっこよくないといけないと思うんです。だから、彼が振り向くときに何枚の絵で振り向くべきなのか、瞬きはどれくらいのペースであるべきなのか、といった部分まで現場に嫌がられるくらいチェックしました(笑)。
――そこまで見るんですね…!
村:それこそ、雪と見つめ合っている逸臣の瞳の中にどれくらい雪が映り込んでいるか、雪を見つめる逸臣のハイライトは揺れているのか、いないのか、ということまでこだわりました。やっぱり視聴者は、雪の視点で逸臣を見る方が多いと思うんですよね。そう思ったときに、どんな瞳で見つめていてほしいのかという部分はかなり繊細に調整しました。
米:アニメを見て、私もめちゃくちゃドキドキしました! 何より、すべてのカットに意味があるので、目が離せなくて。隅々まで見ていただきたいと思いますし、私自身も何度も見たいなと思っています。
――米内山さんが、セリフやモノローグで意識されたのはどんなことでしょうか?
米:『ゆびさきと恋々』は、心の解像度がとても高い作品だと思うんですよね。なので、森下先生が描いている気持ちの流れを大切にする、というのが一番ですね。それ以外で気を遣ったのはト書きなんです。雪は、物事を見ないとわからないですよね。後ろから声をかけられてもわからないし、相手も雪が自分を見ていることをわかってからじゃないと喋らない、ということをしっかり守らないと、作品として配慮がなく見えてしまうと思うんです。それは絶対に避けたかったので、雪はもちろん、それぞれのキャラクターの視線がいまどこにあるのかということを意識しました。
――雪には聴覚障がいがありますが、だからこそ挑戦できた表現はあるのでしょうか
村:映像面では、冒頭でもお話しした通り原作を読んで衝撃を受けた、耳が聞こえないということの可視化ですね。たとえば聴覚障がい者が登場する際の表現として、本人の周囲だけピントをぼかして、周りの情報が不明瞭であることを表現するような描写ってあると思うんです。でも、それには違和感を覚えていたんですよね。それで米内山さんにも話を聞いて。
米:耳が聞こえない分、視覚がすごく発達していて、視野もかなり広いという話をしたんですよね。
村:そうそう。ということは、ピントをぼかすんじゃなくてむしろ全部にピントが合っている世界なんだなと。雪については、そういう集中力の高い世界。一方で、ほかのキャラクターの背景はフォーカスをぼかしていることも多くて、雪の世界との差をつけています。そして、その2つの世界が最終的に混ざり合う最終回になるので、楽しみにしていていただければと思います。
米:逆に私は聞こえないから、というのはないですね。気持ちが動いているということが一番大事なことなので、雪や逸臣がいま何を思っていて、どうしてこういう行動を起こすのかということをいつも通り大事に考えて作品を作っていきました。
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米:必ずや、見た方の世界を広げてくれる作品だなと感じています。あとは、とにかくめちゃくちゃいいので、見てほしい! これに尽きます(笑)。ぜひ1月からの放送をお楽しみください!
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